April 25 2013
春惜しむ兎の耳の冷たさに
澤 好摩
ウサギの耳は本当に冷たいのだろうか。熱燗の熱さに「アチッ」っと耳を触る仕草をする場面がドラマなんかには出てくるけど、人間の耳たぶ同様冷たいのかも。辻まことの「けもの捕獲法」の狩人の話に「兎は耳がちっと長え。なぜ長えかというと、ヤツは目が近目でな、つまり目がわりいすけ自ずと音でモノをききわけるだな」とあり、遠くからでかい声で「ウサギー」を呼ぶ、だんだん間合いを詰めながら声を小さくしていくと、ウサギは馬鹿な人間が見当違いな方向に行っていると思う、最後に耳元で蚊のなくような声で「ウサギー」とささやくと、すっかり安心して目をつぶる、そこを耳をつまみあげて捕まえる。とあったけど、本当かなぁ。春全体のほんわかした空気が兎全体の毛の柔らかさだとすると、耳の冷たさには、時々思い出したようにぶりかえしてくる春の寒さかも。過ぎさってゆく季節の端境にある微妙な寂しさが「兎の耳の冷たさに」託されているように思う。『澤好摩句集』(2009)所収。(三宅やよい)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|