April 22 2013
丹念の畔塗死者の道なりし
古山のぼる
耕した田んぼに水を引いて、いわゆる代掻きを行うが、その水が抜けないように泥で畔を塗り固めてゆく。毎春決まり切った仕事なのだが、今年の春は気持ちがちがう。寒い間に不祝儀があって、この畔をしめやかに柩が運ばれて行ったからである。故人を思い出しながらの作業には、おのずからぞんざいにはできぬという心持ちがわいてくる。ていねいに、丹念にと、鍬先へ心が向けられる。村上鬼城の「生きかはり死にかはりして打つ田かな」が実感として迫ってくる。余談めくが、畔塗りの終わった田んぼをあちこち眺めてみると、塗る技術にはやはり歴然とした巧拙の差があって、なんだか痛ましく見えてしまう畔もあったりする。子供の時にそんな畔を見かけては、手仕事の不器用な私は、大人になって畔塗りをしなければならなくなったら、どうしようかと内心でひどく気になったものだった。『現代俳句歳時記・春』(2004・学習研究社)所載。(清水哲男)
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