April 03 2013
花ぐもり机に凭れ空ろなる
五所平之助
平之助は映画「マダムと女房」「煙突の見える場所」などで知られる名監督。若い頃には身辺に文学青年が多く、「柏舟」という俳号で句会によく顔を出し、先輩に可愛がられたという。脚本を書き、映画をつくるうえで俳句から多くを学んだ、と述懐している。「ぼくの映画には必ず季節感をとり入れた」とも語っている。ところで、今年の桜の開花は例年よりもかなり早くて、東京では三月末以前にもう満開をむかえた。花ぐもりで外気はまだ寒ささえ感じられるのだろうが、花見に出かけることもなく書斎で机に凭れて、しばし空ろな気持ちになっている。花の宴をよそに、静かな書斎で身をやすめて、花見の様子に思いをめぐらしているのかも知れない。それもまた花見どきの人の心のありようを表わしている。年々歳々、花見に出かけて行ってもバカ騒ぎをすることにも飽きて、缶ビールを飲みながら何とはなしに、しばし「空ろ」の時間に身をあずけている自分に気づくことがある。平之助には句集『わが旅路』(1979)がある。他に「花明りをんな淋しき肩を見す」がある。(八木忠栄)
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