March 24 2013
山笑ふ着きて早々みやげ買ひ
荻原正三
明るい春の旅の句です。着いて早々、ご当地土産を買い求め、すこしはしゃいでいる姿を、葉が出始めた山も迎え入れてくれています。句集では、「春風や頬にほんのり昼の酒」と続き、読むこちら側も、おだやかな春の旅の気分をわかち合えます。ところで、句集の跋文を書かれている岬雪夫氏によると、掲句が作られる十年前、荻原さんは難病に遭い、長期にわたる闘病生活を余儀なく過ごされていたそうです。そのとき、看病の枕元で奥さまが読んでいる俳誌を覗くようになり、入院、再入院の生活の中で句作を始められたとのこと。その頃の句に「行くところ他にはなくて蝸牛(かたつむり)」があります。そういう作者の背景を知ったうえで掲句を読むと、ほんとうに、山が笑っているのだと思えてきます。掲句は「平成十八年、四国高知にて」とあり、この旅で奥さまの八重子さんは、「酒酌めば龍馬のはなし初鰹」を残しています。掲句と並べると脇にもなり、連句のように楽しさが広がります。『花篝』(2009・ふらんす堂)所収。(小笠原高志)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|