March 09 2013
さつきまでマラソンコース桃の花
峯尾文世
桃の花は古くから親しまれているが特に都会生活では、雛祭に花屋で買い求めてしばらく楽しむくらいで、梅や桜ほど身近な存在ではないだろう。しかし、ふっくらとしたその形や濃い花の色、なにより、もものはな、という音が、可愛らしく春らしい。華やかでありながらどことなく鄙びていると言われる桃の花、この花らしさはこれまで多く詠まれているが、掲出句の桃の花は新鮮な光を放っている。句集『街のさざなみ』(2012)のあとがきに「常に〈語らぬ俳句〉を心がけてまいりました」とあるが、一読して、あ、いいな、と感じさせる句が並ぶ中、即愛誦句となったのがこの句だった。春を呼ぶマラソン、は誰でも思うところだが、さっきまで、の一語が風景を生き生きと動かす。(今井肖子)
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