January 28 2013
寒天を震るわせている大太鼓
あざ蓉子
歳時記で「寒天」を調べると、いわゆる傍題として「冬の空」の項目に添えられている。これに従えば、句意は「大太鼓の重低音が勇壮に、寒々とした冬の空を震わせるように響いている」となる。ところが「寒天」にはもう一つの意味があって、言わずと知れた食べ物としてのそれだ。こちらの寒天は厳冬期に製造されるから、冬空と区別するために、歳時記には「寒天製す」などの別項目が立てられている。この食べ物のほうの命名者は隠元和尚だそうで、彼は「寒空」や「冬の空」を意味する漢語の寒天に「寒晒心太(かんざらしところてん)」の意味を込めて、寒天と命名したという。明らかに掲句はこの二つの「寒天」を意識していて、実景としてはゼリー状に濁った冬空をぷるぷると震わせて大太鼓の音が響く情景を詠んでいる。寒々とした曇天の冬空を震わせて太鼓が打ち鳴らされる情景は、身の引き締まる思いがわいてくるのと同時に、鬱屈した思いを解きほぐすような効果を生む。「花組」(57号・2013年1月刊)所載。(清水哲男)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|