January 21 2013
ちちははもおとうとも亡しのつぺ汁
八木忠栄
ちちははもおとうとも亡し……。八木忠栄に少し遅れて、私も同じ境遇になった。「のっぺ(い)汁」は、作者の故郷である新潟の家庭料理として有名だ。父母も弟も健在だったころには、よく家族みんなで食べたことを思い出している。思えば、そのころが家の盛りだったなアというわけである。正月や盆などの年中行事に食されることが多いそうだから、のっぺ汁はそのときどきの思い出を喚起してくれる料理でもあるだろう。この句を読んで、さて我が家の料理では何が該当するだろうかと考えてみた。が、残念なことに、何も思い当たらない。私の故郷である山口で有名なのは下関のフグ料理くらいで、我が家のような寒村暮らしには無縁であった。フグどころか、当時は海の魚を口にしたことはなかった。つまり私には、掲句のように食べ物から家族を思いだすよすがはないのである。寂しい話だが、仕方がない。それにしても弟に先に逝かれるのはこたえるな。作者に「弟勝彦を悼む、二句」があり、一句は次のようだ。「元天体少年おくる冬の岸」。合掌。『海のサイレン』(2013)所収。(清水哲男)
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