December 16 2012
ラガー等のそのかちうたのみじかけれ
横山白虹
ノーサイドのあと、勝者の歌は短い。なぜなら、ノーサイドの瞬間に、敵も味方もなくなるからである。ノーサイドのあとに残るのは、互いに火照った肉体、うずき始める筋肉の、骨の痛み、試合中は気にならなかった血が流れ、熱く流れ出た汗は、じきに冷えていく。ラガー等にとって、勝つことはボールを奪うことであり、タックルで止めることであり、有効にボールを蹴ること、回すこと、その瞬間を待ち、その瞬間を作り続けること以外にはない。勝つことは、試合中の80分間のみに集中されているゆえに、ノーサイドの笛のあとの勝ち歌は、短い儀式に過ぎない。かつ、相手を思いやる気持ちでもある。走り、蹴り、パスして、組み、押し、つかみ、離さず、奪い取る。全身の筋肉を使い果たしたラガー等は、一度、ラグビー場で命を燃焼し尽くしたがゆえに、あと歌はおのずと短い。『日本大歳時記・冬』(1981・講談社)所載。(小笠原高志)
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