December 09 2012
寒の月川風岩をけづるかな
三浦樗良
叙景の句です。絵画的に読むなら、遠景の寒の月は、くっきり皓皓と描かれていて、中景の川風が、空間と流れをつくり、近景の岩は、量感を出しています。日本の絵画の特徴は、一点から風景を見定める遠近法よりも、個々の画題(モチーフ)に視点を置いて、じっくり眺めつくして描写するところにあります。空間的な遠近感によって風景に序列をつけるのではなく、画題一つ一つが公平なまなざしでとらえられていて、これはたぶん、幾何学的な方法からうまれた西洋絵画の遠近法とはまったく違ったものの見方を示していることになるのでしょう。掲句は、「花鳥風月」の中の生き物の要素を排して、一見、冬の荒涼とした寂寥感を漂わせています。それでも、ここには、川風が岩をけづる音に耳を傾け、冬を愉しむ作者のありようが感じられます。「寒の月」の静から、「川風岩をけづる」動へと句はうごき、皓皓とした光から、岩がけづれる噪音を冬の音楽として愉しんでいる様を読みます。ここにも、西洋音楽が楽音=音符を傾聴してきたのとは違った、閑寂の中に風物のささやかな音をとらえる日本の耳が示されているように思われます。作者樗良(ちょら)は、蕪村と親交があり、安永年間(1775年頃)、京都に定住したと伝えています。『近世俳句俳文集』(小学館)所載。(小笠原高志)
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