午後、余白句会。兼題は「虫売」「ホメロス」(中上哲夫出題)。(哲




20121020句(前日までの二句を含む)

October 20102012

 カステラが胃に落ちてゆく昼の秋

                           大野林火

日句会で、昼の秋、という言葉を初めて見た。作者は二十代後半、ラーメンを食べる句だったが、秋という言葉の持つもの淋しさとも爽やかさとも違う、不思議な明るさが印象的だった。掲出句は昭和九年、作者三十歳の作。八十年近い時を経て、同年代の青年が健やかに食べている。秋晴れの真昼間、空が青くて確かにお腹も空きそう、カステラがまた昭和だなあ、などとのんきに思いながら、昭和九年がどんな年だったのかと見ると、不況の中、東北地方大冷害、凶作、室戸台風など災害の多い年だったとある。だとすれば健やかより切実、一切れのふわふわ甘い卵色のカステラが、その日初めて口にした食べ物だったかもしれない。だからこその、胃に落ちてゆく、なのか。なるほどと思いながら、昼の秋、の明るさがどこかしみじみとして来るのだった。『海門』(1939)所収。(今井肖子)




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