October 09 2012
朝刊に夕刊重ね鳥わたる
峯尾文世
インターネットの普及により新聞の発行部数は年々下降しているというが、真新しい新聞を開く心地よさは個人的には手放せない。朝刊、夕刊、そしてまた朝刊。掲句は日々の積み重ねが新聞の嵩となり、時間の流れを目に見えるかたちで想像させる。朝夕変化する世界情勢や、喜怒哀楽を含めた事件が盛り込まれた新聞は、脆弱な人間社会を凝縮しているものだ。秋に渡る鳥は、昼間の暑さを避けるため、夜間に飛行する種が多い。星の位置や、地磁気で方位を定め、昔から同じように旅を繰り返している。鳥たちが幾世代に渡ってつちかってきた思慮深さに引きかえ、人間はなんと愚かな行為を繰り返しているのだろう。今朝も胸ふたぐニュースが飛び込む。振り切るように新聞をめくれば、それは思いがけず鳥のはばたきにも似た音を立てるのだった。〈打つよりも引く波音のはつむかし〉〈秋晴れが鏡のなかにしか見えぬ〉『街のさざなみ』(2012)所収。(土肥あき子)
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