September 29 2012
月の海箔置くごとく凪ぎにけり
三村純也
やや遠景、しんと広がる月の海。満ちている一枚の月光の、静かでありながら力を秘めた輝きをじっと見つめている時、箔、の一文字が浮かんできたのだろう。箔の硬質ななめらかさは、塊であった時とは違う光を放っている。句集ではさらに〈一湾に月の変若水(をちみず)凪ぎにけり〉〈月光に憑かれし魚の跳ねにけり〉と続く。変若水、憑、作者と供にだんだん月に魅入られていくような心地である。これを書いている今日、ふくらみかけた月を久しぶりに仰いだ。はじめは雲もないのにどこか潤んでいたが、やがて秋の月らしく澄んできた十日月だった。週末の天気予報はあまり芳しくない様子、投げ入れた芒を見ながら月を待っているが、果たして。『蜃気楼』(1998)所収。(今井肖子)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|