September 23 2012
開き見る忘扇の花や月
山口青邨
忘扇(わすれおうぎ)は秋の季語。残暑もややおさまって、夏に使った扇子を一本一本、開いて見ているところです。扇子を使うのは外出先が多く、そこで会った人や話したこと、飲食の数々を、扇子はそのひだに折りたたみ記憶して、ややくたびれて一季節をまっとうし、用済みとなるところです。掲句はたぶん、エアコンがさほど普及していない時代の句ですから、ひと夏に使用する扇子の数も、T・P・O(時・所・目的)に合わせて幾種類も持ち合わせていたことでしょう。「開き見る」作者の所作から、落ち着きのある生活を感じとれ、鉱物学者であった青邨の整頓された書斎の机上に、扇子数本が置かれているとよみます。季節の区切れを整理する潔さ、句の中に「花・扇・月」、春夏秋の三季を織り込む洒脱、これは、春から中秋まで活躍した扇への愛着と惜別の句のように思われます。「新装・現代俳句歳時記」(2003・実業之日本社)所載。(小笠原高志)
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