June 30 2012
日本の水は美し髪洗ふ
藤浦昭代
歳時記に、行水、髪洗ふ、と並んでいるのを見ると、夕風にたらいの風情。髪洗ふ、とは、浴衣を肩が見えるくらい下ろして長い黒髪を洗うのであり、決してシャワーの前で仁王立ちしてはいけない。そう考えると現在は、髪を洗うこと自体には夏の季感は乏しいかもしれないが〈洗ひ髪夜空のごとく美しや〉(上野泰)の句の艶やかな黒髪には、今も体感できる夏の夜風が心地よく吹いている。掲出句、美しい水で洗われている黒髪もまた美しいのだろう。水で洗う、ということは当たり前でありながら、美しい水で髪を洗う、という表現は新鮮であり、日本人は美しく豊かな水に恵まれて暮らしてきたのだ、とあらためて思うと同時に、それを自らの手で脅かしてしまう愚かさを思う。『りんどう』(2012)所収。(今井肖子)
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