六月もあと一週間。月日の経つスピードに体力がついていかない。(哲




20120624句(前日までの二句を含む)

June 2462012

 鯖の旬即ちこれを食ひにけり

                           高浜虚子

瞬で、ぺろりと鯖鮨を食った。旬だから、好物だから、足が速いから、握られて置かれてすぐに召しあがった。鮨屋のカウンターならば、これがよい食べ方です。山本健吉の歳時記には、「五月十四日作る」とあります。鯖は五月が味の旬とされているので、それを逃さず、これも季節と人との出会いです。それにしても、ただ鯖を食っただけなのに俳句になっているのはなぜでしょう。また、俳句としては例外的に「即ちこれ」といった接続語と指示語を使っています。この効果について、思いついたことをいくつか書きます。一、五七五の定型にするため。二、一瞬で食べられてしまう鯖を「これ」で指示して注目させるため。三、韻律の効果。前半を「サ行音」で、後半を 「カ行音」でまとめた。四、五七五 を三コマのフィルムとみれば、一コマ目は眼の前の鯖鮨、二コマ目は手に取った鯖鮨、三コマ目は腹に入った鯖鮨。と分析しましたが、こんな野暮な考えよりも、句のスピード感が心地いいからでしょう。とくに、「旬」と「即」が漢語でカチンとぶつかっていながらも、「シュン・スナワチ」の音が、速度のある食いっぷりを形容しています。最近の研究で、鯖などの青魚は肝臓がんの抑止効果があると発表されましたが、八十五歳まで健筆を奮った虚子を内側から支えていたのかもしれません。「鑑賞俳句歳時記・夏」(1997・文芸春秋)所載。(小笠原高志)




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