June 09 2012
豚の仔の鼻濡れ茅花流しかな
大久保白村
茅花(つばな)は茅萱(ちがや)の花、流しは湿った南風、ということで初夏、茅花の穂がほぐれる頃に吹く南風が、茅花流し。とは言え、実際に目にした記憶は定かでなかった。それが先週、近郊の住宅街を歩いていたら、ぽっかりと四角い空き地一面の茅花の穂をいっせいになびかせている白い風に遭遇。吹き渡る、という広がりこそなかったが、間近で見た花穂のやわらかい乾きと風の湿りが印象的だった。この句を引いた句集『翠嶺』(1998)には、掲出句と並んで〈黒南風や親豚仔豚身を擦りて〉とある。仔豚の鼻の湿りと茅花の穂のふんわりとした明るさ、肌と肌の擦り合う湿りと梅雨曇りのどんよりとした暗さ、二つの湿りの微妙な違いがそれぞれの風に感じられる。(今井肖子)
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