June 04 2012
木の匙に少し手強き氷菓かな
金子 敦
町の食堂などに「氷」と書かれた小さな幟旗が立つ季節になった。かき氷だが、句の氷菓はコンビニなどで売られているカップ入りのアイスクリームやシャーベットである。買うと、木の匙をつけてくれる。最近ではプラスチック製の匙もあるけれど、あれは味気ない気がして好きじゃない。この木の匙はたいがい小さくて薄っぺらいから、ギンギンに冷えているアイスクリームを食べようと思っても、少し溶けてくるまでは崩そうにも崩せない。句はそのことを「手強い」と言っているのだ。でも、作者はその手強さに困っているわけではなく、むしろ崩そうとしてなかなか崩れない感触を楽しんでいる。夏の日のささやかな楽しみは、こういうところにも潜んでいるわけだ。蛇足だが、木の匙の材質には白樺がいちばん適当らしい。白樺には、ほとんど独自の匂いがないからだそうだ。『乗船券』(2012)所収。(清水哲男)
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