May 23 2012
袷着て素足つめたき廊下かな
森田たま
袷(あはせ)は冬の綿入れと単衣のあいだの時季に着るもので、もともとは綿入れの綿を抜いたものだったという。夏がめぐってきたから袷を着る。気分は一新するにちがいない。もちろんもう足袋も鬱陶しい時季だから、廊下の板の上を素足でじかにひたひた歩く、そのさわやかな清涼感が伝わってくる。人の身も心もより活動的になる初夏である。足袋や靴下を脱いで素足で廊下を歩き、あるいは下駄をはく気持ち良さは、今さら言うまでもない。人間の素肌がもつ感覚にはすばらしいものがある。ところで、森田たまを知る人は今や少なくなっているだろうが、『もめん随筆』『きもの随筆』『きもの歳時記』などで知られた人の句として、掲句はなるほどいかにもと納得できる。ひところ参議院議員もつとめ、1970年に75歳で亡くなった。「いささかのかびの匂ひや秋袷」という細やかな句もある。また三橋鷹女には「袷着て照る日はかなし曇る日も」がある。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)
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