May 13 2012
み鏡に火のはしりたる雷雨かな
大橋櫻坡子
雨降る夕暮れどきの二階屋で、女は一人、じっと鏡を見ています。自身の容貌には、過去の履歴が刻まれていて、皺の一本一本が、目に刺さってくるような心持ちになってきます。かなり長い時間、正座して鏡を見続けているうちに、鏡は、現在の自身の相を映し出し始めます。その時、鏡に火が走る、それは一瞬、自身の相から発せられた火か、と驚きますが、直後、雷鳴が響き、ふと我に返ります。鏡に映ったのは自身の内奥の火か、それとも雷の閃光か、その両方か、そのいずれの火も光も消え、雨音だけが残り、今の自身が露わに映っている鏡----作者が女性なので、句からこんな妄想を抱いてしまいます。miとhiとraiの韻が効いていて、17音中7音がi音であることで、句の「はしり」もあるように思われます。「日本大歳時記・夏」(1982・講談社)所載。(小笠原高志)
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