「昭和の日」と言うのか。いまだに「天皇誕生日」と思ってしまう。(哲




20120429句(前日までの二句を含む)

April 2942012

 夏近き吊手拭のそよぎかな

                           内藤鳴雪

近しは夏隣りとともに、そのとおりの晩春の季語です。吊手拭(つりてぬぐい)は今は見かけられなくなりましたが、それでも地方の古い民宿などに泊まると、突き当たりの手洗い横に竹や木製のハンガーにつるされている日本手ぬぐいを見かけます。内藤鳴雪は正岡子規と同郷松山の先輩であり、俳句は子規に教わりました。明治時代は、戸締りも通気もゆるやかで、外の風や香りや虫を拒 むことなく家のなかにとり入れていたのでしょう。「吊手拭のそよぎ」が、外の自然をゆるやかに受けとめていて、現代住宅の洗面所のタオルには全くない風情を伝えています。タオルはタオルという名詞ですが、吊手拭は、「吊り、手を拭う」で、動詞を二つふくめた名詞です。手拭、鉢巻き、風呂敷、前掛けなど、かつて生活の場で使われていた名詞には具体的な行為が示されていて、それが人の体とつながりのある言葉としてやわらかくなじみます。木村伊兵衛の昭和の写真にノスタルジーを感じるのに似て、「吊手拭のそよぎ」という言葉は、明治という時代のゆるやかな風を今に運んでくれています。『日本文学大系95 現代句集』(1973)所載。(小笠原高志)




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