April 28 2012
行く春の手紙に雨の匂ひなど
北川あい沙
花時が長かった今年、待ちかねたように緑が湧き出てきたと思えばもう四月も終わり、あと一週間で立夏を迎える。汗ばむ日があるかと思えばひんやりとして、晴天が続かず雨もよく降る暮の春。暮春と行春はほとんど同じだが、行春の方が「多少主観が加はつてゐるやうに思はれる」(虚子編新歳時記)とある。行く、という言葉は、振り返ることのない後ろ姿を思わせ、静かな寂しさを広げるからか。そんな春も終わりの日に受けとった手紙は少し濡れていて、かすかに雨の匂いがしている。濡れた紙の匂いが、遠い記憶のあれこれを呼び起こしているのかもしれない。句集の春の章の終わりに〈うつぶせに眠れば桜蘂の降る〉。『風鈴』(2011)所収。(今井肖子)
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