April 26 2012
春の雨街濡れSHELLと紅く濡れ
富安風生
車を運転しなくなってからガソリンスタンドにとんと縁がなくなった。昔はガソリンの値段に一喜一憂したものだが、車を手放してからはガソリンスタンドがどこにあるのやら、道沿いの看板を気に留めることもない。この句は昭和18年に出された句集『冬霞』に収録されているが、当時は車を持っていること自体、珍しい時代。しかも日米開戦後、英語が敵国語として禁止されていく状況を思うと挟みこまれた英単語にモダンという以上に意味的なものを探ってしまう。しかしそうした背景を抜きにして読んでも春雨とSHELL石油の紅いロゴの配合はとてもお洒落だ。同じ作者の句に「ガソリンの真赤き天馬春の雨」があるが、こちらはガソリンと補足的な言葉が入るだけに説明的で、掲句の取り合わせの良さにはかなわないように思う。SHELL石油がなくなったとしても蕪村の「春雨や小磯の小貝濡るるほど」が遠く響いてくるこの句は長く残っていくのではないだろうか。「日本大歳時記」(1982)所載。(三宅やよい)
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