February 24 2012
点滴一架日脚の長くなりしかな
石田波郷
良い句からは多くの学ぶべきところがある。素朴なつくりに見えて凡句には及びもつかないところがある。点滴一架、まずこれが言えない。点滴瓶(袋)が下げてあって移動できるようになっている装置、これを「一架」で過不足なく言う。すごいなあ。次に大方の俳人なら「日脚伸ぶ」という季語をそのまま当てはめて安易に使いがち。それを「日脚の長くなりし」と言う。これも言えそうで言えない。もうひとつ。凡人は「かな」を名詞に付けて用いることが多いから「なりしかな」の何気なさが出せない。ことに近年の俳句にはこんな懐の深い表現はない。点滴の移動装置の影が見える。デッサンの確かさが「写生」の本意を示している。すんなり作ってあるようでいて創意も工夫も感覚もとてつもなく練られている。『酒中花以後』(1970)所収。(今井 聖)
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