January 31 2012
胴に鰭寄せて寒鯉動かざる
山西雅子
鯉は水温が八度以下になると冬眠する。巨木のような胴体に、ひたりと鰭を寄せている寒鯉は、今水底深くごろりと沈む。眠るといってもまぶたのない魚たちのこと、当然目は開けたままである。人間とはあまりにもかけ離れた姿であり、きわめて忠実な描写であるにも関わらず、どこか掲句の鯉に人間の懐手めいた動作を重ねてしまうのは、龍鯉や夢応の鯉魚などの伝承のはたらきも作用していると思われる。俳句を鑑賞するとき、そこに描かれた言葉以上の想像することを戒めて「持ち出し」と言うそうだが、抗いがたくそれをさせてしまうのもまた定型詩が持つ強力な磁力であろう。「星の木」(2010年秋・冬号)所載。(土肥あき子)
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