December 27 2011
温め鳥由の字に宀(うかんむり)かぶす
中村堯子
講談社日本大歳時記の森澄雄の解説によると「暖鳥(ぬくめどり)」とは「鷹は寒夜、鳥を捕えて、その体温でおのが足を暖め、夜が明けると放ってやるという。連歌作法書『温故日録』にはその鷹は鶻(こつ)となっているが、鶻は放った鳥の飛び去る方を見て、その日はその鳥を捕えないという。」と書かれている。最後の「その日はその鳥を捕えない」という部分に強者が弱者へほどこす慈悲を感じ、真偽のほどより報恩の話しとして事実を超えた季語のひとつである。掲句の由の字に宀をかぶせれば宙になる。ひと晩を生きた心地のしなかった小鳥が放り出された空中を思い、また宀の形が鷹のするどい爪根を思わせる。いつまでもあたたまらない指先をストーブにかざしながら、鳥の逸話と漢字が一致する不思議な一句が心を捕えて離さない。〈鳥渡る紙を鋏がわたりきり〉〈ハンカチを膝に肉派も魚派も〉『ショートノウズ・ガー』(2011)所収。(土肥あき子)
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