今年もあと40日を切りました。年の瀬感が増してきましたね。(哲




20111123句(前日までの二句を含む)

November 23112011

 虫程の汽車行く広き枯野哉

                           森 鴎外

イドに目にくっきりと見える句である。広い枯野を前にして、走行する汽車が「虫程」とは言い得て妙。遠くから眺められる黒々とした汽車は、スピードが遅く感じられるから、のろのろと這う虫のように見えるのだろう。わかるなあ。何という虫か? 芋虫のように見えたのだろうか。まあ、ともかく「虫」でよろしい。驀進する新幹線とはちがうのだから、いずれにしろカッコいい虫ではあるまい。電車ではなく汽車の時代であるゆえに、枯野はいっそう荒涼とした広がりを見せている。荒涼とした風景であるはずなのに「虫程の汽車」の登場によって、どことなく愛すべき汽車の風景みたいに感じられてもくるし、枯野を前にした作者の気持ちもゆったりしているようだ。ほぼ同時代の漱石や露伴らは、句作が先行していて小説に移行したわけだけれど、鴎外は小説家として一本立ちしてのち俳句も作るようになった。掲句は「明治三十七年十月於大荒地」と詞書がある。同時に作った句に「ただ一つあき缶ひかる枯野哉」がある。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)




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