今宵は、読者投稿を主体とする雑誌「抒情文芸」の35周年記念会。(哲つ




20111022句(前日までの二句を含む)

October 22102011

 走るやうに父は老いたり花薄荷

                           苑 実耶

がしぶる父を連れて病院へ行ったのは、二年前の十月一日。翌日入院してから、あれほどしっかりしていた頭も含め、全身がぐんと衰えていった。それはさびしいことではあったが、冷静に自分の病状を自己診断したりすることもなくなり、喉が渇いたとか、少し寒いとか、その刹那のことだけを考えるようになっていった。亡くなるまでの病院通いは、十一月二十日まで五十日間。この時期になると、駅のホームで風の音をぼんやりと聞いていたことなど思い出す。そういえば、何十年も走ることなどなかった父だったが、まさに最後の数ヶ月は、走るやうに、終わってしまった。薄荷の花のうすむらさきの香りの透明感が、すこし悲しいけれど静かだったその時の気持ちに寄り添うようで、きっと来年の今頃もこの句を思い出すだろうな、と思っている。『大河』(2011)所収。(今井肖子)




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