October 20 2011
凶作や日に六本のバスダイヤ
小豆澤裕子
凶作というと太宰治の『津軽』を思い出す。郷土史家の友人を訪ねて津軽地域の年表を広げるシーンで、三百三十年間の米の出来具合の記録が転載されており、四ページにわたって凶・中凶・大凶の文字が連なる悲惨に息をのんだ。凶作の年には草の根を食べ、間引きし、娘を売り払いながら土地を守ってきたのだろう。「凶作」という言葉には辛酸な歴史が畳みこまれている。今年の米の実りはよくとも、原発事故の影響もあり東北地方の農家は凶作の年と同じように心細い思いをしているのではないか。ところで掲句の場所はどのあたりだろう。1日にバスが6本しかなく、夕方になると早々と運行が終ってしまう、過疎化した土地での暮らしが思われる。そうした場所で凶作とはどれだけしんどいことか。作者は通りがかりの旅人の視線からそこに暮らす人々の暮らしへ思いをはせて空白の多いバスの時刻表を、停留所の背後に広がる田畑を見つめている。『右目』(2010)所収。(三宅やよい)
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