October 11 2011
罪なくも流されたしや佐渡の月
ドナルド・キーン
日本文学研究の第一人者として知られるキーンさんが架け橋となり、ロンドン大英博物館で1962年に発見された説経浄瑠璃「越後國柏崎弘知法印御伝記」が300年ぶりに復活した。掲句は、繰り返し新潟へ足を運んだおりに出来たものだと、酒席でさらさらと書かれた一句である。普段俳句は作らないが、佐渡を見たときに胸に湧いた言葉は紛れもなく俳句であったという。このほど日本国籍を取得し、日本を人生最後の旅先と決めた。数年前、東京で地下鉄の駅の行き方を尋ねられたことがとても嬉しかったという。日本のなかで、外人ではなくただの人間になれた、と。年齢を重ねると顔立ちは国柄より人柄を放つようになる。東京の地下鉄で途方に暮れた女性にとって、キーンさんはひとりの優しそうな男性だったのだろう。今宵の月齢は13.7、天心に輝くのは23時。きっと日本のどこかで、ただの人間として美しい10月の月を眺めていることだろう。(土肥あき子)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|