八木忠栄『「現代詩手帖」編集長日録』(思潮社)が出ました。(哲




20110928句(前日までの二句を含む)

September 2892011

 わが庭に何やらゆかし木の実採り

                           瀧口修造

外やあの瀧口修造も俳句を書いた。掲句の「木の実」とは、ドングリなどのたぐいの「木の実」ではなく、実際この場合は「オリーブの実」なのである。もちろん鑑賞する側は、「木の実」一般と解釈して差し支えないだろう。私も何回かお邪魔したことがあるけれど、瀟洒な瀧口邸の庭には枝をこんもりと広げた立派なオリーブの大樹があった。秋になると親しい舞踏家や美術家たちが集まって、稔ったたくさんの実を収穫し、それを手のかかる作業を通じて、塩漬けして瓶詰めにする。それを親しい人たちに配る、という作業が恒例になっていた。私もある年一瓶恵まれたことがある。ラベルには「Noah’s Olives」と手書きされていた。私はいただいた瓶が空になってからも大事に本棚に飾っていたのだが、いつかどこやらへ見えなくなってしまった。秋の一日、親しい人たちがわが庭で、楽しそうにオリーブ採取の作業をしている様子を、修造は静かに微笑を浮かべながら「ゆかし」と眺めていたに違いない。ワガ庭モ捨テタモノデハナイ。「何やらゆかし」は、芭蕉の「山路来て何やらゆかしすみれ草」を意識していることは言うまでもない。そこに修造独特の遊びと諧謔精神が感じられる。修造には、吉田一穂に対する弔句「うつくしき人ひとり去りぬ冬の鳥」がある。『余白に書くII』(1994)所収。(八木忠栄)




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