京都の大文字。点火されると街中がざわめく感じに。(哲




20110816句(前日までの二句を含む)

August 1682011

 つれあひに鼻あり左大文字

                           嵯峨根鈴子

夜は京都五山送り火。掲句の大文字は、金閣寺大北山の大文字山である。北山も東山も大文字山と呼ばれているため、御所から見て向かって左にある北山を左大文字、右にある東山を大文字または右大文字と区別しているといわれる。北大文字は、東山の「大」の字を反転させているため左の流れが長いとか、少し小さいので女文字だとか、要は左右対と見なされている。掲句の「つれあひ」なる夫婦の関係に、この対をなす大文字が響き合うことで少々の屈託が生まれた。夫に鼻があるのは当然ながら、炎に照らされた横顔をあらためて見ることの新鮮さが、鼻という輪郭に集約されている。そしてこんなときこそ、この世界でたったひとりの男性と夫婦というかたちを十数年(もっとかもしれないが)続けていることの、不安とも安堵ともつかぬ不思議な感触が芽生えている。ところで、今年は東日本大震災で津波に倒された陸前高田の松原の松を大文字で燃やす計画が、二転三転したあげく、中止になった。放射性物質という得体の知れない恐怖が人の心をかき乱す。『ファウルボール』(2011)所収。(土肥あき子)




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