July 15 2011
蝉むせぶやもとより目鼻なき地蔵
古沢太穂
二語以上の結びつきが習慣的に固定し、ある決まった意味を表すものを成句という。「広辞苑」。この説明の前半部分「習慣的に固定した二語以上の結びつき」もまた詩としては言葉の緊張の不足する要素となりえよう。まして短詩形に於いては致命的になりかねない。川流る、雪降れり、蝶舞へり。季語とて同じ。揚雲雀、緋のカンナなどはどこか最初から絵柄の類型化を志しているかのように思える。蝉につなげて、むせぶは成句を拒否する姿勢がありあり。その二語が成功しているかどうかは二の次。類型を拒否する態度からすべてが始まるのではないか。「もとより目鼻なき地蔵」も、風蝕、雨蝕がすすんで石に還りゆく仏だの消えゆく石の文字だのの定番を裏切っている。もとから目鼻など無いのだ。類型拒否というのは古い型を嫌うということ。それは詩形変革、俳句変革、ひいては自己変革への一歩だ。『捲かるる鴎』(1983)所収。(今井 聖)
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