『大野新全詩集』(砂子屋書房)が出た。深く心に沁みる一冊だ。(哲




20110627句(前日までの二句を含む)

June 2762011

 若楓おほぞら死者に開きけり

                           奥坂まや

(かえで)は紅葉も美しいが、青葉の輝きも見事だ。歳時記で「若楓」と、独立した季語として立てられているのもうなずける。この句のシチュエーションはいろいろに想像できるが、私は納骨の情景を思い浮かべた。普通の墓参りよりも少々厳粛な気分で親族や関係者が集まり、服装も黒っぽい。上天気なのだろう。折りからの初夏の風にあおられて、それまで墓をおおっていた楓の影が払われ、ぱあっと日が降り注いでくる。思わず見上げた目には、真っ青な「おほぞら」が……。そこでいささか鬱屈していた作者は、一瞬救われたような気持ちになったのだろうが、その気持ちを自分のそれだけにとどめず、埋葬される死者と共有しているところが素晴らしい。いや、楓はむしろ死者のためにこそ大空を開いてくれたのだと詠んだ作者の、大きな包容力を伴った情景の捉え方は、読者をもまた癒してくれる。単なるスケッチを超えた佳句だと思った。『妣(はは)の国』(2011)所収。(清水哲男)




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