June 23 2011
微熱あり黒く輝くハイヒール
久保純夫
寝込むほどではない、さりとて何かしらだるく熱っぽい。頭がぼうっと霞がかかったよう。普段通りの生活をしているが瞼の裏が熱くて上ずった感じがするそんなうす雲のかかった脳裏に浮かぶハイヒールは幻想なのか、現実なのか。フェティシズムの中でも女の靴に欲望を示す男が多くいることは知られているが、この句にはあのとがった踵で熱っぽい頭を踏みつけてもらいたい。そんな怪しい欲望さえ感じられる。「微熱あり」と最初に置いてしまうとどんな妄想でも受け入れてしまう難しさがあるが、黒いハイヒールの残酷な輝きは、かえってなまなましい現実を意識させる。季語の共感に寄りかからないこの句の場合、読み手の側へ黒く艶のあるハイヒールがくっきりと浮き出てくれば成功というところか。『比翼連理』(2003)所収。(三宅やよい)
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