June 13 2011
じやがいもの咲いて讀本文字大き
山口昭男
作者は昭和三十年生まれ。したがって戦前の教科書である「讀本」を、実際に教室で勉強したわけではない。資料調べなどのために、図書館ででも閲覧したのだろうか。書かれているように、戦前の初等科の國語讀本は文字が大きく、「ハナ ハト マメ マス」などと印刷されていた。ちなみに、私が習った国民学校一年生の讀本は「アカイ アカイ アサヒ アサヒ」ではじまっていた。ずいぶん大きな文字だったんだな。と作者は感じ入っているうちに、だんだん往時の子供たちがそれを声をだして読んでいる光景に思いが至り、なんだか自分がその子たちのひとりになったような気がしてきた。折りから、窓外は馬鈴薯の花の季節だ。薄紫の花々が遠くに霞むように咲いており、元気に讀本を読む自分の姿が懐かしく思い出されてくるようである。実際に体験したこともない世界をこのように懐かしく思うことは、誰にでも起きることだろう。文字の力、文学の力とは、こういうものである。『讀本』(2011)所収。(清水哲男)
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