May 29 2011
わが死にしのちも夕焼くる坂と榎
加藤かけい
季語は夕焼け。夕焼くるは「ゆやくる」と読みます。人の一生というのは、言うまでもなくその人にとっての「すべて」です。ところが、その「すべて」の外にも、なぜか依然として時は流れ、夕焼けはやってくるのです。自分の終わりが、この世の成り立ちにとって、それほどの出来事ではないのだと気づいてしまうと、ちょっとがっかりします。でも、なんだか気が楽にもなってきます。なにかの一部でしかないということの気楽さをもって、それでも日々に立ち向かってゆく人の命は、なんだか健気にも見えてきます。果てしない空を染める真っ赤な夕焼けは、たしかに坂道や木に似合っています、それでも、字余りになっても榎をここに置いたのは、高い空にすっきりと立つ姿を示したかったからなのでしょうか。あるいは作者の人生の、大切な道しるべにでもなっていたのでしょうか。『合本 俳句歳時記 夏』(2004・角川書店)所載。(松下育男)
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