May 26 2011
五月闇吸ひ込むチェロの勁さかな
朝吹英和
チェロは魅力的な楽器である。単独でのチェロの演奏を切り開いたのはパブロカザロスらしいが、古ぼけた復刻版でバッハの「無伴奏」など聴いていると心が落ち着く。チェロは弦楽器であるから、弓で弦を振動させて音を出すのだが、そのチェロの響きを「五月闇」を「吸ひ込む」と表現してチェロの太くて低い音質を感じさせる。雨を含んで暗い五月闇は否定的な印象で使われることが多いが、この句の場合その暗さをゆったりと大きく広がる魅力的なチェロの響きに転換し、しかもそれをチェロの「勁さ」と規定しているところに魅力を感じる。作者自身演奏者なのか、この句集では様々な楽器をテーマに音楽と季節との交歓を詠いあげている。「モーツァルト流れし五月雨上る」「薔薇真紅トランペットの高鳴れり」『夏の鏃』(2010)所収。(三宅やよい)
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