May 21 2011
十薬のつぼみのやうな昔あり
遠藤由樹子
裏庭にどんどん増えるドクダミと刈っても刈っても増え続けるヤブカラシは、子供の頃我が家の庭の二大嫌われものだった。ほんとに臭いね、などと言いながらよく見ることもなかったドクダミを、しげしげと見たのはやはり俳句を始めてから。近づくと、あんなに嫌だった独特の匂いは郷愁を誘い、葉はハートの形で花は真っ白な十字形、蕾はしずくのような姿で眠っている。ほんとうの花は真ん中の黄色い部分で、白いのは萼だというが花言葉は、白い追憶、とロマンティックだ。そんな十薬の群生する蕾を見つめながら、作者もふと郷愁をおぼえたのだろうか。あのしずくの形が、光に見えたか涙に見えたか、作者の胸に去来したものはわからないけれど、つぼみのやうな昔か、昔っていい言葉だな、とあらためて思った。『濾過』(2011)所収。(今井肖子)
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