May 09 2011
父祖の地の青き嵐も売り渡す
関根誠子
事情があって、先祖代々伝わってきた父祖の地を売却した。青葉若葉の季節で、折りから気持ちの良い風も吹いている。私にこういう経験はないけれど、土地を売却するのはなかなかに勇気のいることだろう。もう不要だからとは思っても、いざとなると愛着がいっそう増してくるからだ。父祖の土地を売るとは、単に地面を売ることではない。地面とともにそこに染みついた家の歴史や環境までをまるごと手放すことだからだ。できればこの「青い嵐」くらいはとっておきたい気持ちだけれど、むろんそうは行かない。だから、この「青い嵐も」の「も」という表現には、決心の強さといささかの逡巡の気持ちが入り交じっている。表面的にはサバサバしている感じの句だが、この「も」が作者の微妙に揺れる心持ちを表していると読んだ。『浮力』(2011)所収。(清水哲男)
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