April 02 2011
初花となりて力のゆるみたる
成瀬正俊
この時期、ソメイヨシノを見上げて立ち止まること幾たびか。花を待つ気持ちが初花を探している。今にも紅をほどかんとしているたくさんの蕾を間近でじっと見ているとぞわぞわしてくるが、それは黒々とした幹が溜めている大地の力を感じるからかもしれない。初花、初桜は、青空に近い枝先のほころびを逆光の中に見つけることが多い。うすうすと日に透ける二、三輪の花は、まさにほっとゆるんだようにも見える。そしてほどけた瞬間から、花は散るのを待つ静かな存在になる。蕾が持っていた力は一花一花を包みながら、やがて満開の桜に漲っていく。『花の大歳時記』(1990・角川書店)所載。(今井肖子)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|