March 25 2011
雄鹿の前吾もあらあらしき息す
橋本多佳子
和服が似合いスラリとして背が高い。今でいうとモデル体型の多佳子。恋の句に秀句の多い多佳子。彼女の句の中のこういう「女」に「天狼」の誰彼がまず瞠目したことは容易に想像できる。殊に西東三鬼などはこういう句を喜んだだろうと思う。雄鹿とあらあらしき息を吐く女性という対比で見ればこの句、性的なテーマとして読まれても無理はない。むしろそのことがこの句の価値を高めていると言ってもいい。この時代にここまで「性」を象徴化して詠った俳人はいない。否、多佳子のあとは誰もいないといってもいいほどだ。俗に堕ちないのは「あらあらしき息す」という7・3のリズムが毅然として作品の品格を立たしめていること。『紅絲』(1951)所収。(今井 聖)
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