March 12 2011
春曙なにすべくして目覚めけむ
野澤節子
生まれてこの方点滴というものをしたことがない、と言ったら、野蛮人ねと言われてしまった。花粉症にもならないし、耳が動くから原始人と言われたこともあるし。確かに頑丈で丈夫が取り柄でここまできたけれど、いつかこのなんということもない日々が幸せだったのだということを、しみじみ思う時が来るんだろうな、とふと思うようになった。この句の作者は、このころ脊椎カリエスで病の床についていたという。この世のあらゆる存在に、何もできず臥せっている自分に、今日も等しく美しい夜明けが訪れ一日が始まる。白くなりゆく空の美しさと向き合いながら神に問いかけるような一句を詠むことで、作者の心は少し平らかになったのではないだろうか。けむ、にこもる心情を思いながら、そんな気がした。『未明音』(1955)所収。(今井肖子)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|