March 10 2011
柵ごしの地面しづもる弥生かな
山本紫黄
郵便番号簿を見ていて季題にある植物と同じ地名を見つけたのをきっかけに季題地名一覧として編集したのが、高橋龍の「郵便番号簿季題地名一覧」である。この句は郵便番号113−0032 東京都文京区弥生の例句として出されている。文京区本郷は、弥生式土器が発見された場所であり、もとになる村落という意味をこめて「本郷」と呼ばれたと聞いたことがある。掲句では、ものみな盛んに茂り始める弥生という季語と、柵越しに見える地面が抱えこむ豊かな時間とが響き合っているように思える。むかしを知る手掛かりになる大事な地名も行政の合理化のため味気ないものに統合されてしまった。東京都文京区弥生も消えかかったが、ここに住む人たちが地名を残すべく行政に抵抗して残ったという経緯があったと本書に記されている。わたしが生まれた場所もどこにでもある「中央区」になってしまったが、考えてみればもったいなかった。「郵便番号簿季題地名一覧」九有似山洞・編(2009)所収。(三宅やよい)
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