March 01 2011
啓蟄のとぐろを卷いてゐる風よ
島田牙城
まだ冬のコートをしまいきれないが、今日から3月。そして来週には啓蟄。地底深くぬくぬくと冬ごもりしていた虫たちが土のなかから出てくるには、まだちょっと早いんじゃないの、といらぬ心配をしたくなる。それでもひと雨ごとに春の陽気となっているのはたしかで、花はその身を外気にさらしているのだから花の時期を見極めているのだろうと推量できるが、土のなかにいる虫たちはどうしてそれを知るのだろう。ちょうど今時分、今年最初の雷が鳴り、これが合図になっていたと考えられて「虫出しの雷」という言葉もあるが、まさか聞こえているとは思えず、なんとも不思議な限りである。掲句がいう風は強くあたたかな南風かもしれないが、「とぐろ」と称したことでどこか邪悪な獣めいた匂いをもった。目が覚めてのんびり土から出た蛙が、一番最初に吹かれる風がこれでないことを祈っている。〈汗のをばさん汗のおぢさんと話す〉〈土までが地球紅葉は地球を吸ふ〉〈ひるまずに降る雪さては雪の戀〉『誤植』(2011)所収。(土肥あき子)
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