二月尽。本格的な春ももうすぐですが、世情のなんと暗いこと。(哲




20110228句(前日までの二句を含む)

February 2822011

 風に鳴るビルや春闘亡びゆく

                           水上孤城

闘の季節だ。と言っても、いまの若い人にはピンと来ないだろう。賃金の引上げや労働時間の短縮などといった労働条件の改善を要求する労働運動である。経済が右肩上がりの時代には、大手企業でなくとも、会社の壁には組合のビラが貼られ、社員は闘争中を示す腕章を巻いて仕事をしていたものだった。労使双方ともに春闘をごく当たり前のこととして受け入れ、交渉のテーブルについていた。振り返ってみれば、春闘にはどこかお祭り感覚も含まれていた。私が体験した例では、組合の賃上げ要求額に会社側が更に上乗せして回答してきた春もあり、組合の役員だった私は赤っ恥をかかされることになったのだった。しかし、不景気が進行するにつれて、闘争自体を見直さざるを得なくなり、賃上げもボーナスも無しという会社も増えてきて、掲句のように寒々とした感覚に支配されるようになってしまった。春闘そのものが亡びつつあり、そのうちには死語になりそうである。いまや若者は、正社員として就職できるだけで良しとしなければならない時代だ。こんな時代になろうとは…。春先の風は冷たく、春ゆえに余計に冷たさが身にしみる。『水の歌』(2011)所収。(清水哲男)




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