February 24 2011
梅林や学生寧ろ海を見る
榎本冬一郎
毎年この時期になると青梅の吉野郷に梅を見に行く。山また山に梅が咲き乱れる様子は見事ではあるが、兵庫の綾部梅林などは頂上近くから瀬戸内海が一望できるらしい。海を臨む日当たりのよい斜面にある梅の木々を思うだけで気持ちがいい。そんな梅林で観梅する人々と違う方向に視線を振り向けている学生の様子が作者の注意を引いたのだろう。今は若者から老人まで同じようにカジュアルな服装をしているが、掲載句の作られた昭和30年代といえば、普段でも制服、制帽の着用が普通だった時代。だからすぐ学生とわかったのだろう。目の前の梅ではなくかなたの水平線をじっと見詰めている彼は、未知の世界へ心を駆り立てられているのだろう。何時の世も青年たちは遠い眼で海を見詰めてきた。現代の若者も梅林より寧ろ海に心引かれるだろうか。「現代俳句全集」四巻(1958年)所載。(三宅やよい)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|