今年も明けて四十日。豪雪あり噴火あり八百長発覚あり、更に何が。(哲




20110209句(前日までの二句を含む)

February 0922011

 咳こんでいいたいことのあふれけり

                           成田三樹夫

ヒルな個性派で、悪役スターとして人気を呼んだ三樹夫は一九九〇年に亡くなったけれど、私などにとっては今もなお忘れられない役者だ。それほど強烈な存在感があった。彼は意外や俳句を四百句も残したという。寡黙な悪役という印象が強いけれども、そういう男がクールな表情で、咳こんでいるという図は屈折している。無駄言を吐かない寡黙な人が咳こんだときにはいっそう、「いいたいこと」のありったけが咳と一緒にこみあげ、あふれてくるにちがいない。でも、その「いいたいこと」をべらべらならべたてることができない。そのことが辛さを強く語っているように思われる。この句が病床での句だったことを知ると、「いいたいこと」がいっそう切実に思われる。川端茅舎に「咳き込めば我火の玉のごとくなり」がある。刑務所長だった三樹夫の父は、俳句雑誌や世界戯曲全集などを揃えていた人だったらしい。三樹夫はチェーホフやストリンドベリなどが好きだったとか。酒と将棋が好きだったというのはわかるけれども、詩作を愛するシャイな男であり、家庭的な人だったというのは意外。あるインタヴューで「ガツガツしないでワキのほうがイイです」と語っていた。他に「冬木立真白き病気ぶらさがっている」という病中吟もある。『鯨の目』(1991)所収。(八木忠栄)




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