二月は罐をける小さな靴(北村太郎)。けられた罐は春の方へ。(哲




20110201句(前日までの二句を含む)

February 0122011

 おさなごの息がルーペに花はこべ

                           池田澄子

こべは、はこべらとも呼ばれ、漢字では「繁縷」。こんな難しい字を背負っていたのかと驚くが、道端や庭の片隅などでよく見かける、いかにも雑草然とした地味な草である。米粒ほどの白い花は、よくよく見れば星の形をしていて確かに味わい深く可愛らしいが、あらためて振り返るような花ではない。しかし、尽きることのない子どもの好奇心の前では別だ。一度ルーペを渡せば、小さな手が探偵よろしく、家のなかから庭先まで飽きることなく覗きまわる。新しいことを知りたい気持ちが押し寄せて、ルーペが曇るのも構わず小さな花と向かい合うのだ。思えば、大人になればなるほど、目をつぶる機会は多くなる。年を重ねるごとに腹立たしいことやむなしいことばかりが目につき、自分の心を穏やかに保つために、なるべく見たり聞いたりしないようにするのが人の世の保身術であり処世術なのである。掲句に触れ、なにごとにも目を凝らしていた時代のわくわくした気持ちを思い出すことができた。息で曇ったルーペを拭えば、すぐそこまで迫っている春の姿が映っているかもしれない。「俳句α」(2011年2-3月号)所載。(土肥あき子)




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