January 11 2011
遠吠えが遠吠えを呼ぶ霜夜かな
松川洋酔
ちょうど本日1が重なるワンワンワンの日に合わせて犬の句を。遠吠えとは、犬や狼が身に危険を察知したときにする情報伝達のための呼び声である。町で飼われている犬たちが、パトカーや救急車のサイレンに反応するという現象は、サイレンの高低が遠吠えに似ているためといわれ、大きな車が危険を知らせながら猛スピードで通り抜ける姿に、縄張りを荒らされていると勘違いしたペットが威嚇のリレーをする。群れから遠ざかり、人間との生活が長い犬が、遠吠えという犬同士でしか理解できない声を手放さない事実に切なさを感じるのは、過去の歴史のなかで野生の獣として走り回っていた姿があったことを強く思い出させるからだろう。霜が降りる夜は気温が低く、よく晴れ、風のない日だという。張りつめたような霜の夜、犬が持つ高性能の鼻や耳は、なにを嗅ぎ分け聞き分けているのだろう。イギリスの作家サキの傑作「セルノグラツ城の狼」では、ある家柄の者が死に近づくと森の狼が一斉に遠吠えをする。これが実に誇り高く美しいものだった。掲句に触発され、読み返している。〈明らかに戻りしあとや蜷の道〉〈炭足してひととき暗くなりにけり〉『家路』(2010)所収。(土肥あき子)
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