December 24 2010
蛇の肉わかちて二寸なおくねる
秋山牧車
牧車さんは大本営陸軍情報参謀。大将山下奉文指揮下のフィリピン方面軍に終戦一年前に派遣されマニラ山中にて米軍に抗戦のあと終戦で投降。捕虜となる。この句の真骨頂は「二寸なおくねる」。銃後において戦火の前線を想像で描いた作品はいわゆる「戦火想望俳句」とよばれるが、それらは戦争の悲惨や前線の様子が常識と類型的先入観の域を出ない。体験していない事柄には事実に伴う夾雑物が入らない。表現が扁平になるのである。実はその夾雑物こそがリアルの根源。では俳句はフィクションではだめなのか。だめだとはいわないが、想像だけでこの夾雑物を出せるかどうか。この句のテーマが飢えの果てに蛇を食うことだとすると、そこまでは想望俳句でも詠める。問題はそのあと。「二寸なおくねる」は体験したものにしか詠めない。倫理的な正義やいわゆるそれらしい「想望」にまどわされてはならない。俳句の力はこういう「細部」にこそ宿る。『みんな俳句が好きだった』(2009)所載。(今井 聖)
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